装飾芸術(Decorative Art)

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 装飾と美術との区別は、本質的に西洋のルネサンス後から生じ、装飾芸術は、絵画、彫刻、写真、モザイクとは対照的に、芸術史のあらゆる期間で他の芸術と共に重要な役割を担ってきたのです。ギリシャの陶器や中国の磁器のように用いられたり、イスラム美術では、他の伝統的文化の芸術と同様に、装飾芸術から構成されて、幾何学的形態や植物形態を使用しています。当時のヨーロッパでは、彩飾写本や記念碑的彫刻、金細工、象牙の彫刻、織物などに施されていました。
 装飾芸術に用いられる文様とは、互いに反復・変形・交替する対称的ないし非対称的な形と、相互に関連し合うモチーフからなります。文様を読むという行為は、その図柄と装飾物の文化的・社会的な背景を探る作業を伴います。例えば、装飾物はなぜ作られたのでしょうか。誰がデザインし、作り、装飾したのでしょうか。それを見ることが許されたのは誰なのでしょうか。文様は何に使い、何を表したのでしょうか。  文様が描かれると、物には力が宿ります。目を惹きつける素材と技巧の視聴覚的出来栄えにより、それは見るものを魅惑し、心をも動かすのです。その色や形、さらに光の反射といった特性を手段として、文様は考え方や感情を伝えることができます。文様はまた人間社会にとっても重要なもので、人々が物を見る方法に影響を与えたりもします。
 いくつものモチーフが組み合わされると、それぞれのモチーフが有する力が増幅し、1個の図柄のうちに様々な文様が併置されると、個々の文様の意味と効果が変化して、何かしら新しいものへと変容します。個々の、または組み合わされたモチーフ、もしくは連続する形の集まり全体が一つの単位として繰り返されます。それは文様作りに不可欠であり、これがなければ、文様がインパクトを与えたり、しかじかの意味を帯びたりすることもないのです。
 文様は人間の感覚に訴えるだけでなく、それを生み出した人々の世界観が照り映えている芸術なのです。